甍 iraka 賞

1997年 第9回 瓦屋根設計コンクール

審査員講評



金賞(住宅部門)
岡崎Y邸(愛知県岡崎市) 横山正登
  甍の連なる町並みの一角、その中でふっと開放された環境に、横山さんの二階建(木造)の住宅があります。その作品は、前後二つに大別された棟を甍が結び付ける空間構成となっており、ガラス庇に導かれた路地空間は、そこに静かな光のたまりが存在する別世界を創り出しています。
  また、この家の原点は、内部から外部を強く意識することで形を呼び起こし、中庭に設けられた風水の池から生じる光のたまり・瓦のすっきりとした棟の納まり・軽やかな屋根の表現などに感じ取ることが出来、町並みにあってふっとした開放空間を創り出した所為と言えましょう。
  素材のこだわりにおいても、素材感を楽しみながら、生活作法を充分に心得た中での簡潔なディテールは、真に見事であり、住宅として魅力的な空間を生み出しており、そうした作者の視点には強い共感を覚えました。


金賞(一般部門)
かわらミュージアム(滋賀県近江八幡市) 出江 寛
  晴れ上がった青空に緑溢れる八幡山が眼前に迫ってくる光景は、私達が失い懸けている日本の風景そのものであります。
  近江八幡・八幡多賀所には、瓦屋根と漆喰壁の蔵が建ち並び、沈黙の美に包まれた静寂な響きが透明な空気を呼び起こしています。運河に沿って造られたこの建築は、「古美」を主題に古瓦をアクセスの路地空間に持ち込んでいます。それによって、素材の発する伝統・柔らかさ・気品の相まった建築として路地空間を再生しています。
  瓦を屋根だけではなく、庭や照明器具に用いる一方で、瓦の新しい可能性を探し求めて行くといった、出江氏の作家としての前向きな姿勢に敬意を表すと共に、作品からは甍の美しさと可能性を感じ取ることが出来ました。

  (出江寛氏設計意図より)
  「瓦」と「古実る」
  ここでは、瓦の持つポテンシャルを存分に引き出し、歳月を経るとともに美しくなる「絵になる建築」を創りたいと思ったのである。

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